税務調査を受けるための7つのポイント(後編)
名古屋市北区の税理士 太田啓之です。
今回は、まだ税務調査を受けたことがない、これから受ける予定があるという経営者様向けに
調査の一連の流れがサクッと理解できる
「税務調査を受けるための7つのポイント(前編)」の続きです。
前回は、税務調査官が実際に事業所や事務所までやって来るまでの流れを紹介しました。
今回は、いよいよ実際の調査がどのようなものかが明らかになります。
調査の進め方は調査官それぞれ独自のやり方があり決まったものはないのですが、
たいていの調査官は始めに
どのような事業を行っているかなどの会社概況を聞いてきます。
ある程度会社についての話を聞き取った後、
帳簿書類などを調べていきます。
帳簿書類は、会社によってそれぞれですが共通するものとしては、
決算申告書、財務諸表、総勘定元帳、仕訳帳、
伝票、補助簿、売上帳、仕入帳、源泉徴収簿などです。
事前通知の時に必要と言われたものについては、
当日すぐに提示できるように、あらかじめ準備しておいた方がよいでしょう。
調査官が指摘するポイントは会社によって様々ですが、
よくあるものが売上の計上もれと棚卸資産の計上もれです。
①売上の計上もれ
特に「期ズレ」が発生していないかチェックされます。
期ズレとは当期の売上が翌期に計上されている状態のことです。
基本的に売上は商品を引渡した時点をもって売上として認識します。
決算日までに商品を引渡したにもかかわらず、
その売上を翌期に計上してしまった場合は
当期の売上がもれているとして指摘を受けてしまいます。
また、月締めで売上を請求している場合、
締め日から決算日までの売上計上がもれることがあります。
これも期ズレです。
たとえば20日締め請求を行っており、
3月31日が決算日の場合は、
3月21日~3月31日分の売上を別途計上する必要があります。
②棚卸資産の計上もれ
仕入計上が正しく行われているかを確認するために期末在庫をチェックされます。
計上もれの主なケースとしては、
取引先に預けてあるものや移送途中のものが計上されていない、
陳腐化により売れない商品を廃棄していないにもかかわらず在庫から省いてしまった、
未使用の梱包材料などの消耗品費を貯蔵品として計上していなかったなどです。
また、仕入の際に発生した運送費などが在庫金額に含まれているか、
製造業や建設業においては仕掛品、未成工事支出金に
人件費が含まれているかなどもチェックされます。
税務調査の結果、
申告内容に問題がなかったということであれば調査終了です。
後日税務署長から
「その時点において更正決定等をすべきと認められない」という旨の書面が届きます。
しかし、申告書に間違いなどがあった場合は、
調査官から調査結果の内容の説明を一通りされた後、
修正申告をすることを勧められます。これを「修正申告の勧奨」といいます。
その調査結果に納得した場合は、修正申告書を提出して不足していた税額を納付します。
さらに、そのペナルティーとして不足していた税額の10~15%の過少申告加算税、
又は、その申告間違いが隠蔽又は仮装したものであれば
35%の重加算税を納付しなければなりません。
また、本来の納期限から遅れて支払うことになるので遅延利息として延滞税もかかります。
調査結果に納得できない場合は、
修正申告の勧奨に応じず修正申告をしないこととなります。
その場合、税務署長から更正処分を受けることとなり更正通知書が送付されます。
この更正処分に納得いかないのであれば、
①税務署長等に対する再調査の請求、
②国税不服審判所長に審査請求のいずれかを選択することができます。
①を選択した後再調査の結果に不服があれば、②を選択することが可能です。
さらに国税不服審判所長の裁決になお不服があれば、
裁判所に訴訟を提起し裁判で争うことができます。
事業経営をされている社長にとって切っても切れないのが税務調査です。
どうせ受けなければならないのであれば、
対処法として税務調査がどのようなものであるか事前に知っておくことで
堂々と臨むことができると思い基本的なことをご紹介しました。
本稿が実際に税務調査を受ける際の一助になれば幸いです。
今回の記事は、以前、税理士会の名古屋北支部からの依頼を受けて書いたものに
加筆・訂正したものとなります。
この記事を一通り読んでいただければ、事業者が受ける税務調査について
ひととおり理解できるのではないかと当時の私は思っていたのですが、
これだけでは、税務調査のことがさっぱり理解できない、もっと知りたいという方は、
他の関連記事も書いていますので、そちらもよろしくお願いします。(←宣伝かよ)
(最終更新日:2022/10/28)