経営者保証を外すことはできるか?
名古屋市の税理士、太田啓之です。
2023年4月から「経営者保証」の取り扱いについて、
大きな改革がありました。
経営者保証とは、そもそもどういうものなのか。
また、今後どのように変わっていくのか。
この点を金融機関の視点も踏まえて解説いたします。
経営者保証とは中小企業が金融機関から融資を受ける際に、
経営者個人が会社の連帯保証人となる「個人保証」です。
企業の連帯保証人となる訳ですから、
企業が倒産して融資の返済ができなくなった場合は
経営者個人が企業に代わって返済をすることが求められます。
しかし、企業の借入に対して経営者個人の資産が不足しているケースが多いため、
経営者保証による債権の回収は難しいのが現実です。
経営者保証については2013年から「経営者保証ガイドライン」というものに沿って、
金融機関と中小企業間で運用されてきました。
しかし、こちらのガイドラインには法的拘束力は無く、
金融機関側も今までの融資慣行に従い、
経営者を連帯保証人として徴求することが実情としてありました。
今回の改革ではこの融資慣行が
「中小企業活性化の妨げになっているのでは?」という点から、
見直されることになりました。
経営者保証改革プログラムは全金融機関に
経営者保証という融資慣行の見直しを求めるものです。
基本的な考え方は「経営者保証ガイドライン」と変わりありませんが、
経営者保証に依存しない融資態勢を促すために
数々の施策が整備されたプログラムとなっています。
注目すべきは以下の2点です。
2023年4月以降に
経営者等と保証契約を締結する場合は
保証契約の必要性と保証契約の変更・解除(可能性)の条件について
個別具体的な説明と記録化を求めています。
具体的には創業融資や事業承継特別融資制度を利用する場合、
連帯保証人を徴求しない制度の確立。
不動産担保等で充分な保全が確保されている場合に
連帯保証人の徴求を不要とするものです。
では、金融機関が今後どのような基準で連帯保証人を徴求するのか。
今後は以下3つの要件が基準となり、経営者保証を解除するかどうかを判断します。
① 資産の所有やお金のやり取りに関して、法人と経営者が明確に区分・分離されている。
たとえば、法人から経営者個人への貸付金は無いか。
事業用資産が経営者個人名義でなく、法人名義となっているか。
② 財務基盤が強化されており、法人のみの資産や収益力で返済が可能である。
たとえば、法人単体の債務償還年数や自己資本比率等の指標が
各金融機関の基準の範囲内か。
③ 金融機関に対し、適時適切に財務情報の開示がされている。
たとえば、試算表や資金繰り表等の提出を定期的に行い、
企業の財務状況を確認できるか。
税理士等の専門家により計算書類の検証が行われているか。
①~③は一時的満たしているか、
ではなく将来に亘っても充足されている必要があります。
今回経営者保証改革プログラムの発表がありましたが、
各金融機関で経営者保証の取り扱いについては方向性を模索している最中かと思います。
新規の借入については
経営者保証を取らないという方向性を示している金融機関もありますが、
既存の借入についてもすべて外れるわけではありません。
その場合はどの要件を満たしていないのかを確認していただき、
一緒になって改善に努めてください。
(最終更新日:2023/12/1)